向日葵にさよなら。

 電話番号も連絡先も知らないのに、どうやって彼女が元気か確認すればよいのだろう。
 僕が知っているのは、倉本が近くの市民病院に通っていたということだ。


「……ひとつあった」

 店の窓を拭いている最中にひとつだけ方法を思い付いた僕は、すぐに掃除をやめてエプロンを脱いだ。


「ちょっと出掛けてくる」

「遅くならないようにね」

 駆け足で二階にいき、財布の入った鞄をつかんで再び一階へと戻った。
 店を出て外に出ようとしたとき、花の手入れをしている母さんに声をかけられた。


「ちなみにどこにいくつもり?」

「……市民病院」

「どうしたの、急に。誰かのお見舞いに行くなら、何か持っていきなさいよ」

「いや、大丈夫」

 病院には、倉本のお母さんが退院したのか確かめにいくだけだ。
 個人情報だから教えられないって言われるかもしれないけど、いくだけいってみようと思った。

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