・キミ以外欲しくない
1
都心から少し離れた郊外でも、見渡せば背の高いビルが立ち並んでいる街。
この場所も都会なのだと、ビル群を見上げる度に思い知らされる。

地元を離れ、就職してから何年経ったのだろう。
すぐに思い出せないのは、違和感がない位この街に馴染んでしまったということなのかな。


忙しなく往来している車の多さや人混みに、何度地元に帰りたいと思ったことだろう。

そんな私が今日まで過ごしてこれたのは、この人のおかげ。


「ん?」


不意に顔を見上げた私に気付き、優しくて温かい眼差しを向け返してくれる。
その瞳に映っている自分の姿も、幸せそうな笑顔だから。


「ううん、なんでもない」


___いつまでも、隣にいたいと願わずにはいられなくなる。

< 1 / 61 >

この作品をシェア

pagetop