・キミ以外欲しくない
「ははっ、それ本気で言ってる? 客目線で対応していたら、低予算どころか我が社が赤字になってしまうだろ」
バカにするように鼻で笑ったのは、モデルルーム担当の日高主任。
目つきが鋭くて、見た目だけでも冷たそうで怖いイメージなのだが、それは見た目にイコールしていて。
この人は、いつもこうして誰かの意見にいちゃもんをつけるのが常だ。
今まで補佐的に参加していた会議でも、誰かの企画に対し揚げ足をとる嫌な男だと認識していた。
運の悪いことに、今回も参加しているなんて。
企画が実行される前から、明らかに私を潰しにかかっているとしか思えない。
「大体、女性が独りでマンションを購入しようなんて考えていることからして、一生独身を覚悟したからってことだろ。なら、おひとり様で過ごす老後の為にバリアフリー必須とかにした方が親切じゃないか?」
「あ……ですよね」
日高主任から指摘されたことは最もだった。
夢ばかりを詰め込んだ私の提案書には、独身女性が結婚し家庭を持つところまでしか考えられていなかったからだ。
「じゃあ、どうします?」
「提案書自体を白紙に戻して練り直すとか?」
「にしても、近々基礎工事が着工されるし、モデルルーム公開の日程もずらせないです」