・キミ以外欲しくない
次々に浴びせられる言葉に、的確な回答が出来ない。
やっぱり私には荷が重すぎなんだよ。
ただでさえ、会議に出席している面々は男性ばかりだし。
困り果てている私を、佳乃が後ろからサポートしようとしてくれている事に気付く。
会議室の空気が悪くなってゆくのを感じ、少しずつ私の隣りに立とうと近づいて来てくれていたのだ。
当の私は、日高主任の指摘に委縮し完全に頭の中が真っ白状態になっている。
ただ何も言えずに、下を向くしかなかった。
個々に言いたいことを話し始めてしまい、会議室は雑談の場と化し始めてしまった時。
「分譲以外にも賃貸物件があるマンションなんだから、全員が老後のことまで考えてる客とは限らない。西本の考えは女性の憧れの一つだし、独身を貫くのも結婚するのも、決めるのはお客様自身だ。タイミングも違えば、選ぶ未来も違って当たり前だろ」
静かに語り出した声に引き寄せられるように顔を上げると、会議に出席していた社員達も一斉に声のする方に顔を向けていた。
「日高の考え方は経験上からも当然の見解だ。しかし西本の考え方も、ひとつの見解だ。それぞれ皆にも見解があるはずだ。こうして色々な意見を知りたいから、今回は社全体からの公募にした。ある意味、俺の作戦勝ちかな」