・キミ以外欲しくない
経験豊富な日高主任の意見を参考にさせてもらいながら、他の社員達も意見交換しモデルルーム案が出来上がっていく。
会議に出席することだけでも緊張していたのに、今こうして大勢の社員達の前に立ち、議長までしているなんて。
数分前の私には考えられないことだ。
なのに、不思議と気持ちは落ち着いている。
もっと心臓がバクバクする位、緊張して何も話せなくなると思っていたのに。
どうしてだろう。
そんなことを思いながら会議を進行していくと、上座に座っていた副社長がチラリと腕時計に目を落とした。
時間を確認し終えるとスッと立ち上がる。
「……すまない。私は席を外すが、皆は引き続き仕事を進めてくれ」
え、居なくなっちゃうの?
一気に不安の波が押し寄せる。
「今日出来る所まで詰めたら、後で俺の部屋まで報告に来るように」と言い、振り返りながら私を見降ろした副社長は、前を向き直し言葉を付け加えた。
「若葉マークの西本を、皆で支えてやってほしい。頼んだぞ」
「はい」
「勿論です」
「任せて下さい」
副社長の言葉に口々に応える社員達は、私に温かい視線を向けてくれた。
「皆さん、宜しくお願いします。頼りにしてます!」