・キミ以外欲しくない
マズい姿を見られてしまった私と、マズい姿を見てしまった副社長。
お互いに気まずいのは当然なわけで。
こういう場合、どちらが先に話し出すべきなのだろう。


「ふぁ、ファスナー上げて下さいっ」

「あ、あぁ」


見られてしまったものは仕方がない、開き直り副社長に背中を見せた。
最悪だ。
今日は何をしても、副社長に変なところばかり見られてしまうばかり。
ファスナーを上げてもらいながら、恥ずかしさとカッコ悪い気持ちで顔が火照っているのを感じる。


「出来た。アクセサリーは? 何か持ってきてるのか?」

「はい、普段使っている物ですけど」


こういう時に、何気なく話題を変えてくれるのはありがたい。
持って来たアクセサリーを広げて見せると、副社長はパールのイヤリングと一粒ネックレスを選んだ。


「髪上げて」

「自分でできます」

「いいから、早く」

「……はい」


副社長は首に腕を回すと手際よくネックレスをつけ、イヤリングまでつけてくれた。
こんなことを男の人にされた経験のなかった私にとって、動揺せずにはいられない行動であり。
カーッと体が熱くなるのを感じた。
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