・キミ以外欲しくない
「やっぱり責任のある仕事がしたいじゃない?」なんて口にした佳乃は、内心自分の提案が選ばれると思っていたのかもしれない。

それが、よりによって私の提案なんかが選ばれてしまったから。
つい本音が出てしまったのだろうか。


「今回の仕事で成功することが出来たら、昇進も夢じゃないかもね」

「何言ってるのよ、佳乃ならそうかもしれないけど。私だよ? 今回はきっと誰かの気まぐれか何かで採用されたに決まってるよ」


ナイナイ。と顔の前でヒラヒラ手を動かし否定する。
そんな私の手を「ガシッ」と掴んだ佳乃は、力強く言った。


「ちょっとぉ、始まる前から弱気にならないで。女性社員が上を目指せるチャンスなんだからね」

「そんな責任重大みたいなこと言わないでよ」

「重大よ。雪乃でも昇進出来たら、他の女性社員達の励みにもなるんだしさ」


……ん?
今、なにげに引っ掛かること言わなかった?
私「でも」昇進出来たらって、どういう意味よ。


たまに毒づかれることも慣れているけど。
こういう時の返し方が、微妙に分からないんだよね。

ヘラヘラ笑えば、軽くみられるだろうし。
かと言って、腹を立てて見せれば「冗談も通じないヤツ」とか言われちゃいそうだし。


「とにかく、一時間後には顔合わせだからね」


さっきの言葉はスルーして佳乃に告げ、パソコンの電源を入れた。
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