飛蝗者

o3

冷蔵庫に入っていた麦茶をグラスに注いで、先日学部の友人からもらったスイス土産のチョコレートと一緒に持って行く。

部屋に来たのは正大ではなかった。
正大と正反対の、私が最も憎悪している感情的な芸術家だった。

パソコンから流れる音楽は、スチャダラパーから口ロロに切り替わったところだった。
父はソファに座らずに、本棚の前に立って、半月前にディスプレイされた書籍たちを眺めていた。

文庫本、新書、実用書、参考書、それらよりもずっと手に取りやすく前面に配置されているのは雑誌だ。
音楽雑誌、インテリア雑誌、パソコンとか機械系のムック。
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