飛蝗者
「私、正大さんが働いていた頃の話、聞いたことない」

私が言うと、正大はそう?と首を傾げてから、少しだけ視線を逸らした。

隠していたわけではないのだけれど、でも、君は就活生だから。と、彼なりに気を遣っていたようだった。

21歳までは地元で働いていた、と彼は言った。
中学を卒業してから21歳で上京するまでの間に、水野正大という人間はゆらゆらと形成されてきたのだそうで、今はもう完成形なのだと、彼はあくび混じりに冗談を言った。
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