飛蝗者
賢者タイムの置き換えとして正大がパソコンにかじりついてしまうと、私は煙草を吸いに外へ出る。
百均の灰皿とライター、ウィンストンミニ1箱は、いつでも玄関に置いてある。これらを片手に共用通路へと出て、1階の駐車場を見下ろしながら一息つく。

正大は煙草を吸わない。非喫煙者の前では煙草を控える私にとって、事後のこの時間は貴重な喫煙の機会だった。

煙草を吸い終えると、靴を脱がないまま玄関に喫煙具を置き直して、買い物に出かける。ウォーキングを兼ねた買い物はいつも1時間半かける。
部屋から離れた成城石井までわざわざ出るようになったのは、忙しい正大の時間を尊重したいという私なりの気遣いだった。
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