最後の恋 【番外編: 礼央目線】
「二人になれるところに行こう。」


そう言って紫乃が向かったその先は、図書室だった。


音を立てないように静かにドアを開け、中の様子を伺う紫乃。


いつもは、誰か委員の人が座っているはずのカウンターには誰もおらず、それどころか図書室内はシーンと静まり返り誰一人いる様子がなかった。


火曜日の昼休み…


松野さんがカウンターにいる金曜日の昼休みとは雰囲気の全く違う図書室だった。


紫乃は、どんどん奥まで歩き進める。


いつもの俺が向かう本棚よりもずっと奥…


突き当たりまで行くとやっと足を止め、こっちを振り向いた紫乃はもう女の顔になっていた。


「誰もいないし…今のうちに…しよ…。」


俺に甘えてくる紫乃。


何も出来ずに突っ立ったままの俺に紫乃が痺れを切らしたように抱きついてきた。
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