最後の恋 【番外編: 礼央目線】
「今までどこにいた?」

「プライベートな質問にお答えすることはできません。」


彼女は俺の視線から目をそらすと、その場に固まりかけていた意識を仕事に向け始めた。


今までとは全く違う彼女の冷たく固い声だった。


「…俺は認めないと言ったはずだけど。」

「今は、業務時間中ですから。」


頑なに態度を崩そうとしない彼女。俺を見ようともしない。


このままでは埒があかなくて近づこうとすると、逃げようとした彼女がドアへと向かった。


彼女が手をかけたドアノブの上から逃さないようにその手をとらえると、ドアと俺に挟まれた彼女の肩が怯えるようにビクッと震えた。


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