ああ 私の理想的学園生活
火のない所に煙は立たず

この言葉は本物だと確信した。

ドコッ、バキッ、ガッシャーン

やばい、ここにいては死ぬ。私の本能は逃げろと警告を発している。

ちなみに、ドアに手をかけた所で私は動きを停止している。そういえばD組って女子いるのかな。そんな疑問が浮かんだ。
まさかね私一人とかないよね。

トントン

私は不意に誰かに肩を叩かれた。

「入んないの?」

そこには葵くんが立っていた。

先程とは違い、話しかけてきてくれた。もしかして中々教室に入らなかった私が邪魔だったのかな?

「ごめん、邪魔だったよね、」

とりあえず謝っといた、葵くんは別にとそっけなかった。

「俺が先に教室に入るから、そのあと早坂が入ればいい」

葵くんは私に気を使ってくれた、そしてナチュラルに名前を覚えていてくれた!
ごめん怖そうな人って思って。
優しい青年ではないですか彼は!



「ありがとう、葵くん」

私は教室という名の危険地帯に足を踏み入れる。


先程の喧騒とはうってかわり、静寂が教室内の空間を支配していた。

「誰だてめえ」

最初に声をあげたのは、金髪で手にじゃらじゃら指輪やら腕輪をはめたイケメンだった。

「……」

葵くんは黙りだ、私も黙っとこう

「おうおう、無視とはいい度胸じゃねえか、しかも女連れ」

金髪のイケメンは立ち上り、私のほうへ寄ってきた。

「はっ、大したことないな」

私に向けて発せられた一言がそれである。

「こんな女を連れているこいつも目が節穴だな」

「おい、謝れ早坂に」

葵くんは、私への発言を謝るよう促した。

「こんな間抜け面女にはお前みたいた男がお似合いだよ」

こいつ、この金髪め。

今度は間抜け面と言ったか、聞き捨てならん。

「俺のことは何を言っても構わない、だが何も言っていない彼女を貶して恥ずかしくないのか」

「やんのか、喧嘩なら買うぜ」

何をいってるんだこいつ、喧嘩を売りまくっていたのはそっちだろ。

「葵くん、私は大丈夫だから。先生も来ちゃうし席につこう?」

そう二人を引放し、金髪と目を合わせずにすれ違おうとする。

そしてちょうどすれ違った瞬間に、嫌な予感がした。

案の定、金髪が葵くんを今にも殴りかかろうとしていた。

パシッ

金髪の拳を誰かが止める。戦慄が走る、おそらくクラスで金髪は中心的存在だろう、誰も彼の発言を邪魔していないのがそれを表している。

で、誰が金髪の拳を止めたって?
葵くん?もしかして先生?


答えはどちらもNOだ、正解は私である。

「ねえ、金髪くん、君ね不意打ちは卑怯じゃないかな」

私は笑顔で頭の血管はぶちギレそうだ。平常心は保っている、ただし私の握力はゴリラ並みである。高校男子には負けていないはずだ。
金髪は驚いている。まるで豆鉄砲食らった鳩ようだ。

「この、ゴリラ女め」
「何か言ったかな、ごめんね耳が遠くて」
「ババアめ」

この不思議な状態をどうすればいいのか、葵くんを見ると少し笑ったように見えた。

ガラガラ
「おい、お前ら席につけー」

教室の空気を先生の一言が変えてくれた。

「早坂、お前ら何やってるんだ?」

今の私と金髪は私が彼の手をまるで握りしめているみたいだった。

「新しい挨拶を考えてたんです、友情の握手」

「へえ」

先生はにやにやしていた。苦しい、言い訳だなと我ながらに思う。

大人しく席につき、簡単に入学式の流れを説明された。

素行が悪い人たちにしては、先生の話は真面目に聞くのね……。

「で、以上が説明だ。何か質問はあるか」

先生の話が終わり、入学式のために教室をぞろぞろと皆が出ていった。
私はもちろんぼっちだ。クラスに女子は私だけだから。
葵くんはゆらゆらと何処かへ消えた。まるで猫だな。
金髪は帰った。サボりとはいい度胸だ。

教室を出る前、先生は皆に告げる。

「この学園でいくら、他のクラスの奴等がお前らに何て言おうと無視をしろ。喧嘩はクラス内で済ませろ。つうかするな」

先生はさらりと言ったが、暗にD組の学園内の立ち位置を皆に示したようだった。


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