小悪魔なキミに恋しちゃいました。


「……っ」



ずっと無言でいる結城くんが気になって、横を見てみると、どこか寂しそうに空を見上げていた。



考えてみれば、今日はたまに遠くを見ていることがあって、隣にいるのに心ここにあらずって感じだった。



私に会うまでに何かあったのだろうか。



「……結城くん、」



「ねぇ、キミさ」



ドーンっと大きな花火が打ち上がった時、結城くんの頬にキラめく何かが見えた。



本当に一瞬で、暗闇に戻った時にはわからない。



「この花火の色が無くなったらどうする?」



「色が、無くなる?」



突然よくわからないことを言い出した結城くんの、考えていることはもっとわからない。



「もうすぐ、綺麗な青空も、夕焼けも、青々とした葉の色も、花も街もキミも……きっと白黒になる」



「結城くん、何言って……」



「キミは僕のことが嫌いなんでしょ」



いつも小悪魔で意地悪で強い口調で私をバカにしてくるのに……



今ここに、そんな結城くんはいない。



一体ここにいるのは誰なのかと問いたくなるくらい、弱々しい結城くん。


< 192 / 252 >

この作品をシェア

pagetop