小悪魔なキミに恋しちゃいました。
「……そうだね」
結城くんのことが嫌い。
今までそうだったように、自分の気持ちに正直に肯定しただけなのに、胸の奥が何故かチクンと痛んだ。
「だったら、ちょうどいい。夏休み明けからはもう中庭に来なくていいよ。キミを彼女にしたのも僕のこの性格を口止めするための口実だった訳だし、バレた今じゃ関係ないでしょ」
「そ、そう。中庭に行かなくていいなんて、せいせいするよ」
「じゃあね、茉莉ちゃん」
「あっ……」
そう言った結城くんは、私だけをそこに置いて、立ち去ってしまった。
私は動けずに、ただ遠くなっていく結城くんの小さな背中を見つめていた。
ただ寂しく大きな花火の音だけが響いてくる。
……なんだったの?
もう中庭に来なくてもいい。
それはきっと恋愛契約の終了のお知らせ。
長く短い、私たちの関係が今日、今ここで終わったんだ。
嬉しいはず。
ずっと、この日を心待ちにしていたはず。
それなのに……なんで私は泣いているんだろう。
それに気づいたのは、しょっぱい涙が、口の中に入ってきてから。
「なんで……なんで泣いてるの」
それがどうしてなのか、今の私には何もわからなくて、ただ心を空っぽにして泣いていた。
まだこの時の私には、キミの精一杯のSOSを気づかずにいたんだ。
最後までキミの強がりで。
自分のこの気持ちの理由を探すことだけにただ、必死だった。