小悪魔なキミに恋しちゃいました。
2学期が始まって数日。
やっぱり気になってしまう私は、教室の中で結城くんの姿を探す。
でも逃げ足の速い結城くんは、当然のように教室にはもういない。
「遠くからなら、わからないよね」
この後予定もないし……
少しだけなら、と久しぶりに中庭に行ってみるのことにした。
やっぱり人気のないこの中庭は、人通りが少ない。
あんなに綺麗なところなのに、知らないなんてみんなもったいない。
中庭にそびえる大きな木は、まだ青々とした葉を付けて、生暖かい風に揺られていた。
「いない、か……」
そこには誰もいなかった。
前もこんな事があったなと、思い出して少し近づいて見たけれど、草の上に寝転ぶ結城くんはどこにも居なかった。
前なら、木の影に隠れていたのに。
「来るわけないよね」
私にもう中庭には来なくていいって言ってたもんね。
なんで、私ったら寂しいなんか思っちゃってるんだろう。
ここでだって、ろくに結城くんと話してるわけでもなかったし、むしろ無言で過ごす時間の方が多かったのに。
「私が来るまで、こんな気持ちだったのかな……」
結城くんは、ずっとひとりでここにいたんだろうから。
そこまで考えて、結城くんに限ってそんなわけないかと思った。