小悪魔なキミに恋しちゃいました。


2学期が始まって数日。



やっぱり気になってしまう私は、教室の中で結城くんの姿を探す。



でも逃げ足の速い結城くんは、当然のように教室にはもういない。



「遠くからなら、わからないよね」



この後予定もないし……



少しだけなら、と久しぶりに中庭に行ってみるのことにした。



やっぱり人気のないこの中庭は、人通りが少ない。



あんなに綺麗なところなのに、知らないなんてみんなもったいない。



中庭にそびえる大きな木は、まだ青々とした葉を付けて、生暖かい風に揺られていた。



「いない、か……」



そこには誰もいなかった。



前もこんな事があったなと、思い出して少し近づいて見たけれど、草の上に寝転ぶ結城くんはどこにも居なかった。



前なら、木の影に隠れていたのに。



「来るわけないよね」



私にもう中庭には来なくていいって言ってたもんね。



なんで、私ったら寂しいなんか思っちゃってるんだろう。



ここでだって、ろくに結城くんと話してるわけでもなかったし、むしろ無言で過ごす時間の方が多かったのに。



「私が来るまで、こんな気持ちだったのかな……」



結城くんは、ずっとひとりでここにいたんだろうから。



そこまで考えて、結城くんに限ってそんなわけないかと思った。


< 197 / 252 >

この作品をシェア

pagetop