小悪魔なキミに恋しちゃいました。
複雑な思い<side玲央>
数週間の準備期間を経て、ついに迎えた学校祭。
僕は、接客係になっていたらしいけど、ワー、キャーと騒ぎ立てられることは目に見えていたから、サボってしまった。
始まった頃から中庭で、ただ空を見上げていた。
「久しぶり……」
何となく来ることを避けていた、お気に入りの中庭。
"もう中庭に来なくていいよ"
そう須藤さんに告げてから。
キミはバカだから、ふらっと習慣のように中庭に寄っていそうだから。
もし、そんなところに僕が行っていたら、鉢合わせてしまう。
流石に学校祭の今日は、来ないかと思った。
確か、いつだか見たクラスのシフトは、須藤さんや宮野さん、大和と同じ前半だった。
きっと3人は今も、せっせと働いているんだろう。
罪悪感を感じないと言ったら嘘になるだろうけど、好きでもない女子たちに囲まれるくらいなら、あとでサボったと怒られる方がよっぽどマシだ。
そんなことを考えながら、前と同じように、空に向けて枠を作る。
やっぱりここで感じるそよ風は心地いいし、この芝の上に寝転がって見上げる空はとても綺麗だ。
「綺麗。だけど、薄い雲がかかっているようだ……」
確か、今日は雲一つない晴天だったはずなのに。
「青空さえも見られなくなるのか」
弱々しい僕の声は、風と一緒に広い青空へと消えていった。