小悪魔なキミに恋しちゃいました。


「……あっ」



ドンっと大きく打ち上がる花火。



「……ほとんど見えないね」



校舎に囲まれているこの中庭からは、大きな壁が邪魔して、花火の上の方しか見えない。



それでもキミは、



「綺麗だね」



その目に焼き付けるように、見つめていた。



「ねぇ、結城くん……っ」



名前を呼んだら、指を唇に当てて止められた。



「結城くんじゃなくて玲央って呼んで」



「えっ、あの……」



「あの……じゃなくて、キミはもう僕の彼女でしょ?それなら名前で呼ぶこと。キミに拒否権はないよ」



意地悪にそう言って笑うから、私も笑う……ことはドキドキして出来なかったけど。



「れ、玲央くん……」



なんだろう、名前を呼ぶだけなのにこんなにドキドキする。



「玲央くん、私……玲央くんの目になるから。もし、玲央くんの世界から色が消えても私がまた綺麗な世界を教えてあげる」



桜は、薄いピンク色。



木の葉っぱは、綺麗な緑で太陽の光に当てられて透き通った色。



空は、どこまでも続く青い海。



「この花火だって、色は私が教えてあげる」


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