小悪魔なキミに恋しちゃいました。
「……り、茉莉〜!朝よ、起きなさ〜い!」
「んぅ……」
部屋の外からお母さんの声がする。
重い瞼をあけると、もう外は日が昇り明るくなっていた。
……憂鬱だ。
部屋着から制服に着替え、全身ミラーに映る自分をみて思う。
まだセットされていないボサボサの髪は、昨日の結城くんの撫でられたあとを思い出してしまうし、キスを落とされたおでこを妙に意識してしまう。
「はぁ……」
こんなにため息をついていたら、幸せも逃げていきそうだ。
身支度を整えて、リビングへと降りると、お母さんが食卓テーブルに朝食を並べていた。
「おはよう、お母さん」
「おはよう、茉莉。あら、なんか元気ないんじゃない?」
……お母さんは鋭い。
私の気持ちを見透かされている。
「そう?大丈夫だよ」
「ならいいけど。てっきり恋の悩みかなーと思っちゃったわ?」
「……っ」
恋、ではないけど、そんなものだろうか。
好きなんてことはなく、全くその逆なわけだけど、分類的には恋の悩みになるのかもしれない。
怪しまれないように「違うよ」と答えて、ボロが出ないうちにと、朝食をかきこんだ。