小悪魔なキミに恋しちゃいました。


嫌なことというのは、何故か続いてしまうもの。



「キャーっ!」



毎度の如く上がる黄色い歓声。



その女の子達の声を聞くだけで何が起こっているのかすぐに察しがつく。



奴だ、奴が来た。



私を昨日から散々悩ませている、厄介で大嫌いなクラスメイトの登場だ。



「おっ、カッコイイ玲央くんが来たんじゃない?」



悠陽ちゃんも興味津々で、声のする方を見ている。



会いたくない、出来れば顔も合わせたくない。



昨日のあれがあった後、初めて顔を合わせる。



どんな顔をしたらいいの?



アイツはどんな反応をする?



「みんなおはよう」



近づいてきたのか、はっきり聞こえる結城くんの声。



お願いだから、何事もありませんように……



心からそう願ったその時だった。



「須藤さんもおはよう」



それはちょうど私の隣を通った時。



みんなに向ける笑顔のまま、初めて私の名前を呼んで挨拶をしてきた。



ただ、目だけは笑っていない。



「……おはようございます」



王子様と呼ばれる人に挨拶をされて返さないなんて、ファンの女の子にどんな目をされるかわからない。



結城くんと女の子からの恐怖を感じながら、小さく挨拶を返した。



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