小悪魔なキミに恋しちゃいました。
……うるさい。
遠くで練習している部活の声もはっきり聞こえるほど静かな中庭。
そこに、私の心臓の音が大きく響く。
なんでドキドキしてるのよ、私。
中庭に着いたはいいものの、会わなければいけない気持ちと、一刻も早くここから立ち去って家に帰りたい気持ちとが、複雑に絡み合う。
私が来たことに気づかれないように、そーっと足音を立てないように、少しずつ進む。
少し歩いたところで、昨日のように芝の上で寝転ぶ結城くんを見つけた。
本当にいつもここにいるんだ。
今日も結城くんは、両手を空に向け、小さな枠を作っている。
何を見ているんだろう。
じっと見つめるその空には何があるんだろう。
それが不思議で仕方なかった。
「ねぇ、キミ」
「……へっ?」
突然声を発した結城くんに驚いて、思わず声を出してしまう。
ハッとして口元を両手で押さえるが、それはもう手遅れ。
「隠れたいなら、もっと徹底したらどう?」