小悪魔なキミに恋しちゃいました。
「それで、他には何もないの?」
"仮"だとはいえ、私に彼氏が出来たと喜び、興味津々の悠陽ちゃん。
とことん踏み込んでくる。
他に何かないのかと聞かれ思い出すのは、一つしかない。
突然だとはいえ、ハッキリと覚えている結城くんのどアップな整った顔と、柔らかい唇の感触。
恥ずかしくなって、今にも赤く染まりそうな頬を隠すように俯いた。
鋭い悠陽ちゃんは、何か感づいてしまったようで、ニヤリと笑みを浮かべたのがわかった。
「ふぅーん、何かあったのね?」
あぁ……なんて伝えよう。
恥ずかしくて、その言葉を口にできない。
その時だった。
「おはよう、須藤さん、宮野さん」
声の主は、もちろん私の仮彼氏。
「あ、おはよー、玲央くん!」
名前を呼ばれテンションが上がる、悠陽ちゃん。
「……おは、」
挨拶だけは返そうと顔を上げると、私たちに微笑みかける王子スマイルの結城くんと、バッチリ目が合う。
ただでさえ、昨日のことを思い出して意識していた私は、再びフラッシュバックして、せっかく落ち着かせようとしていた鼓動も早まり、体温も上がる。
おまけに頬が染まっていくのがわかった。
そのせいで、返したかった挨拶も、言い切ることができなかった。