小悪魔なキミに恋しちゃいました。


「ほらほら、王子様がお待ちかねよ?」



そのまま無理矢理背中を押され、行くことになってしまった。



……憂鬱。



人の波とは真逆に、人のいない方へと進んでいく。



最初はなんでこんなところに、なんて思ったけれど、結城くんはいつもファンの女の子が周りにいる。



あんないい顔して、笑顔振りまいてるから、その優越感にでも浸ってるのかと思っていたけれど、あの裏の顔を思い出すと、逃げたくなることもあるんじゃないかと思った。



逃げるには、この人気のない北階段は絶好の場所。



そうこう考えているうちに、北階段に着いた。



階段下だから、1段ずつ下へと降りていく。



だんだん遠ざかる人の声。



「あれ……?」



一番下まで降りたはずなのに、誰もいない。



「結城くん」



そう名前を問いかけるけど、返事は返ってこない。



人の貴重な時間を奪っておいて、何?



呼び出した本人がいないなんて……



帰ろう、そう思って後ろを向いた時だった。


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