君があの子に、好きと言えるその日まで。完
第一章
プロローグ
君が泣いている姿を、一度だけ見たことがある。
放課後の教室の端っこで、窓を見つめながら静かに涙を流す君を、今もはっきりと覚えている。
知らぬ間に頬を伝っていた涙に気づいて、君は驚いたように指でそれを拭っていた。
あの日から私は、
君が寂しそうに目を伏せると、胸が苦しくなる。
君が太陽みたいに笑っていても、胸が苦しくなる。
あの日の涙が、私の心の中で染みのように広がって、頭から離れない。
冷たい涙の温度を想像するたびに、私は、息をひそめて願うのだ。
どうか、君の世界が、優しい色で染まりますようにと。
どうか、君の世界が、大切なもので溢れますようにと。
こんな風に、
ただ願うことしかできない恋が、
この世界に、いったいどれだけ転がっているというのだろう。
人を好きになることが、こんなに苦しいことだなんて、本当に、知らなかった。
知らなかったな。