君があの子に、好きと言えるその日まで。完
「……望月のポスター、スタジアムに貼られるの楽しみだな。……俺、好きだよ、望月の絵」

自分の気持ちを抑えつけようとしているのに、星岡君はこんなことをさらっと言ってくるから酷い。

充電器ひとつ借りたことが、こんなことになるなんて、あの時の私は思ってもいなかった。

ありえない話だけれど、もし、万が一、星岡君と付き合えることになったとしても、私は罪意識をぬぐうことはできないだろう。

どこかで小さな罪悪感を抱きながら、星岡君と一緒にいても、きっと幸せになんかなれない。


私は私のためにも、諦めなきゃいけない。


また一瞬暗い顔をしてしまっていたのか、一之瀬君に頭を小突かれた。

私は、なんだよ、と笑って一之瀬君の肩を軽く叩いた。



体育祭当日は、雲を突っついたらすぐに雨が降り出しそうなほどの曇天だった。

生徒たちは中止のメールを心待ちにしていた様子だったけど、先生の判断で無事に開催されることとなった。

民間の運動会場はとても広く、一年生から三年生まで総勢千人を超える人数が、余裕をもって座れる広さだった。

しかし、広いがゆえに生徒の誘導が難しく、先生も常にメガホン片手に大声を出している状況で、生徒はやる気なくだらだらと歩いている。

私も、青いハチマキを頭に巻いて、実行委員として忙しなく動いていた。

ポニーテールにした髪の毛が走るたびに揺れるので、首元がくすぐったくて意外と邪魔で、私は結んできたことを少し後悔していた。


「リレーの選手は、速やかに移動してくださいー!」

メガホンをもって私も一生懸命声を張るが、私の声なんて誰も聞いちゃいない。

少し肌寒く感じる天気だったが、沢山走って大声を出していたせいか、額にはじんわりと汗が浮かんできた。

「繰り返します、リレーの選手はー……」

「望月、それ貸して」

観覧席に向かって必死に声をだしていると、後ろから男子がメガホンを奪い取って、声を上げた。

「まだ集まっていないのは二年三組のリレーの選手だけです、早く移動してくださーい!」

私の何倍もの声量のアナウンスは、すぐにリレー選手の元へ届き、選手が小走りでグラウンドに降りて行った。

メガホンを奪い取った男子……星岡君は、はい、と私にそれを返してくれた。


「ご、ごめん、ありがとう」
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