君があの子に、好きと言えるその日まで。完
……本当最低だな、俺。


「もっちーは、翔太に想いを伝えたくても伝えられないんだよ。だから自分から近づいてこないんだ」

「……だからそれ、どういう意味なんだよ」

「もっちーがいつから翔太のこと好きだったか知ってる?」

「いや、本人から聞いてないし……」

「きっと翔太が思ってるより、ずっとずっと前だよ。それでももっちーは、想いを告げずに翔太と翠のこと応援してたんだ……」


一之瀬の言葉をきっかけに、望月と過ごした日々が走馬灯のように流れ込んでくる。

体育祭で実行委員が一緒になった時も、俺が美術室によく遊びに行くようになった時も、雛の墓参りで泣いてしまった時も、そのあと俺と翠のことを応援してくれた時も、望月は俺のことを思ってくれていた……?

自分の気持ちは押し殺して、俺の幸せばっかり願って。


……ふと、秋祭りでの望月の泣き顔が蘇る。

『星岡君にだけは、そんなこと聞かれたくない……』。

ぽろっと彼女の頬を伝った涙を思い出して、その意味をようやく今理解して、まる搾り上げられるみたいに胸が苦しくなった。

俺、本当に最低なことした。

今すぐ望月の元へ行って、群がっているクラスメイトを強引に退けて、抱きしめて謝りたい。


望月と会えなくなると分かって自覚した。

罪悪感で胸が締め付けられて想いが募った。


「俺、望月が好きだ……ごめん、一之瀬……」


本当にバカだ、俺。

鈍感もここまでくるとどうしようもない。

俺が気づいていないところで、何度望月のことを傷つけただろう。

想像しただけで、自分が嫌になる。


「俺、今すぐ望月に謝りたい……」

苦しそうに顔を歪めて、教室へ向かおうとした俺の背中を、一之瀬が思い切り叩いた。


「いって、なんだよ一之瀬」

「なんでこんなに自分の気持ち殺してまで、お前と翠のこと応援したのか、考えてから動けよ」


一之瀬は、珍しく取り乱した様子で、自分の髪をくしゃっと握りしめた。


「一年の春、雛が事故に遭ったその日、翔太が充電器を貸した女の子は、望月だよ」

「え……」

「責任を感じた望月は、自分の想いを伝えずに、お前と翠をくっつけようと必死に頑張ったんだ……」

「なんだよ、それ……」
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