木村先生と和也君
和也君の部屋
「どうぞ,入ってください」

階段を上がると,二階には三部屋あって,そのうちの一つが和也君の部屋だった。

きれいじゃないと言っていたが,小奇麗に片付いており,南側に勉強机,北側にベッド,間に低いテーブルが置いてあった。

「和也君,キレイにしてるじゃん!」

私は男子の部屋が物珍しく,キョロキョロしてしまう。

「あんまり見られるとボロが出るんで,見ないでください」

和也君は照れくさそうに言う。

「そこの机のところにでも座ってください」

私はテーブルとベッドの間に座ると,和也君がすぐ隣に座ってきた。

「ちょ,ちょっと,和也君,近い近い!」

思わず声が大きくなってしまった。

「宿題しよ!宿題!和也君はそっちに座って」

私の向かい側を指すと,和也君は少し不満そうにしながらもおとなしく通学用のカバンを出して座った。

焦ったー!

男性とふれあいそうなくらい近くに座ることなんて普段ないから,それだけで変な汗をかいてしまった。

汗臭くなったら困るな・・・

「宿題,なんの教科をやります?」

「できれば英語か,数学がいいんだけど。それ以外は予習しないとちょっときつい」

特に世界史なんて最近教えてないから,すっかり忘れてる。

「じゃあ数学で」

カバンの中からプリントが出てきた。

「高校になると宿題異常なくらい多いんですよね」

私が高校生だった頃を思い出す。高校生は大変だ。

「和也君のお父さんとお母さん,びっくりしてたよね。なんだか申し訳ない気分になったよ」

私は正直な感想を言った。

「何が申し訳ないんですか?」

「だって,和也君まだ学生なのに社会人の彼女って普通嫌でしょ。やっぱり私達は年齢離れすぎだよ。しかも,男性が年上ならともかく,女性の方がずっと年上のカップルっていないじゃん」

「普通ってよくわからないですが,うちの親だったら,その辺他の親よりも理解があると思います」

「なんで?」

「うちの親も母親の方が歳上なんすよ。確か8歳差だったかと」
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