無駄な紅葉は散り濡れる.
吾恋は
「お前が白拍子の紅葉御前か」

それは突然の出来事。

あたしは驚きを隠せない。
目の前の男は姿こそ、大人になったけれど、
藤原 征人その者。

征人はあたしを見ると
声にならない声を上げる。

「さ…き……こ……」


あぁ、懐かしい名で呼んでくる。
そうよ、あたしよ。
そう叫びたい。
けれど、場所がいけない。

白拍子が売られ買いする場所。
そこで征人と出逢ってしまった。

お互い、身分がバレてはいけない。
あたしの場合、前の身分だが。


何とも言えないキモチが
胸いっぱいに広がる。

征人に会えた喜び。
でも、なんで?
ここに征人はいるのだろうか。

聞くに聞けない。
あたしの身分は簡単に
身の上の人に話しかけてはいけない。
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