全ての記憶を《写真》に込めて
結局赤組がリードのまま迎えた最終競技。
このリレーで勝っても、勝利は赤組だ。
「悔しいな…、こんなに差がついちゃったよ」
「でも、差を詰めれば大丈夫だよ!茉莉ちゃん、頑張って!」
応援しかできないのが、辛い。
翔くんも、クラスも、白組も、みんな雰囲気が暗くなっている。
すると、パンパン、と乾いた音が響いた。
「ほら、まだ最後の競技あるでしょ」
しっかりしてよねぇ、と晴くんが白組全体に声をかける。
「ここでこのまま負けたらただの格好悪いやつだけどさ」
「ここで勝ったら、たとえ結果が悪くたって格好いいんじゃない?」
「ま、それでもいいならそれでいいけどさぁ正直俺には関係ないしねぇ」
すると、晴くんはこちらを向いて微笑んだ。
いつもと違う、優しい笑みで。
偽りじゃない微笑みで。
体育祭の空と、太陽に、ピッタリだ。
写真を撮ろうと思ったけど、その手は晴くんに掴まれて。
「もし、あんた達が走らないならさぁ、俺たちが走るよ?」
ね、と同意を求められる。
「うん、私は、走るよ……、みんなが走らないなら」
本当は私だって走りたい。
だけど、どうしてダメなのか知らないけど、走れない。
「でも、走れないから、みんなに、お願いしたいんだ」
長い沈黙。
「おい〜、お前らここまだ言わせておいて落ち込んでんのか〜」
その沈黙を破るかのように気の抜けた声が響く。
「あ、明智先生、どこにいたんですか?」
「デスクワークが終わらねぇ……」
ほら、お前ら最後のリレーは得意だろ?と満点の笑顔で、なんの曇りもなく告げる。
「そうだね!頑張ろ、みんな!」
「俺らいちばん取れんじゃね」
「リレーで圧倒的な差をつけて優勝まで登っちゃう?」
「もしかしたら、赤組に隕石落ちるかも」
赤城さん声をかけたらが、みんなが、どんどん息づいていく。
「よし、行ってくるよ」
晴くんが掴んでいた手を離す。
「行ってらっしゃい」
みんな、頑張って_______________。
晴くんの笑顔を撮りたかったけど、だけど、何故か、掴まれた腕が暑い。
掴まれてたから、かな?
だけど、何故か走ってもいないのに動悸がする。
「………?」
前に感じた、モヤモヤとは、関係があるのかな……?