全ての記憶を《写真》に込めて

「みんな!頑張ってー!」
私は走れないから外野で応援する。
みんなが作ってくれたゼッケンを身にまとって。

このリレーは団に得点は入るけど、各クラスで走るから、今だけは翔くんとも敵だ。

中盤まではすごくリードしていた。
確か晴くんは34番目、茉莉ちゃんはアンカーの人へバトンを渡す。
多野くんがクラスアンカーだったはずなんだけど………。



「いててて、悪ぃ 誰か代わってくんね?」


前半に走った多野くんは後ろから来た赤組の人ともつれ合って転んだ。

「た、多野くん……!足大丈夫!?」
誰がどう見ても最後走れる気がしない。
今もクラスの子に肩を貸してもらっている。

「赤城さん、誰か俺ん所入れといて」
「うん」

そして、多野くんが保健室へ向かう。
「わ、私も付き添おうか?」
「大丈夫、御国さんは和久井見とけよ きっとあいつがアンカー走ってくれるからさ」
そうやってクラスのこと背を向けたあと晴くんが多野くんを呼び止めた。
「ちょっとぉ、何勝手なこと言ってんの?」
俺走んないけど、と。

「あれ?俺達が走んないなら和久井たちが走んじゃねーの?」
「そうは言ってけどさぁ」
「御国さんに走らせるのは酷だろ?だったら和久井が走れ」
頼む、と多野くんから、クラスのアンカーを頼まれる。

「晴くん、走る?」

何も返事がないから聞き返してみると大きなため息が聞こえた。

「はいはい、走ればいいんでしょ」

あんたはもう保健室に行きな、と多野くんを急かす。

「あんた、ちゃんと見ときなよぉ」
レンズ越しじゃなくてちゃんとねぇ、とカメラを指さされながら言われる。
「うん!」


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