全ての記憶を《写真》に込めて
「ど、どうしたの……」
「いいから、黙って待ってて」
そして、何かを探し出す晴くん。
「あ、あった」
パサ、と広げられる雑誌。
そこには、晴くんと、真依さん。
「これが、オレ こっちが瀬凛」
「うん、今と、変わらないね」
「でしょ」
これはきっとモデル時代。
二人の距離がすごく近くて、向かい合って。
いっぽ近づいたら、そのまま口が触れてしまいそうな。
これは、独り言なんだけど、と晴くんがつぶやく。
「オレはモデルが嫌なわけじゃないんだけどさぁ」
「小学生の時、モデル始めた時からこういう写真ばっか撮られてて」
「途中から事務所でただの人形扱いになったんだよねぇ」
「思い通りにいかなかったら殴られて、ただ写真に収めるだけの道具」
「まぁ、写真が撮られるのが嫌なのはこれと別の原因なんだけど」
「こんなトラウマ抱えたまま、オレがモデルに戻っていいと思う?」
弱々しい声で、俯きながら呟く。
いつも、しっかり者の晴くんが、私に意見を求めてきている。
仕事のこと、モデルのことで、悩んでいるんだ。
こんな晴くん、見たくないよ……。