全ての記憶を《写真》に込めて

「オレはやっと普通の生活に戻れたんだけどさぁ、元マネからの脅迫に近い要求があるんだよねぇ」
はぁ、うざい……、と呟く。

「脅迫に近いって…………」
「あんたに迷惑かけれないでしょ」
そう言って、さっきの事もあってか思うように距離を縮められない。
迷惑なんていくらでもかけていいのに。
むしろ、今までのお礼をしたいのに。
晴くんを元気づけたいのに。

「あ、晴くん…っ!」
カメラを取り出して急いで駆け寄る。
コレ見て、と差し出す。

「これ…、え、何がしたいの?」
「写真みて元気出して!楽しい思い出が沢山あるんだよ」
私は今まで写真に勇気づけられていた時もある。

そして、カメラを晴くんに渡して見守る。
あんまり近づくと晴くんが心配するから。

「ククッ……、こ、これ………っ、」
晴くんが急に笑い出した。
わ、私そんな変な写真撮ってたっけ?
「なんの写真?え、そんな笑える写真あった?」
「いや、別にぃ」

そして、そのまま返される。
「オレも写真撮ってみようかなぁ、面白そうだしさ」
「ほんとっ!?一緒に撮ろ!」
「まだやるとは決まってないけどぉ」
そう言って笑顔を見せる晴くん。




「あのさ、ありがとねぇ」


「え、」


「元気づけようとしてくれて、さ」


「そんなの、いつも私が晴くんに元気づけられてるから」

別にいいのに。
晴くんはやっぱり優しいんだね。
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