全ての記憶を《写真》に込めて
「あ、そういえば…」
宿題とかってあったっけ?と晴くんに聞かれる。

そう言われれば…………。

「数学と古典であった気がする……」
「あんたやってないでしょ」
「晴くんもだよ、ね?」

お互い顔を見合わせる。
そして、おかしくて笑ってしまう。

お互い手をつけてない状態。
宿題の存在すら忘れてた。

さっきの恐怖から一変、普通の日常が帰ってきたような感じ。
もしかしたら、晴くんは私に気を使って話題を変えてくれたのかもしれない。

「晴くん、食器洗っておくね」
「ありがとぉ、………あんた風呂入る?」
「……入りたい、かな」
迷惑じゃなければだけど、と付け加えると何が迷惑なの?と返ってくる。
そういう所は本当に優しい。

「じゃあ、あんた先に入りなよ」
「え、いいの?」
「あ、でも服ないかも」
「あ………、」
それはどうしようもないかも。
ま、まだ下着だったら、女の子の日用に、持ってるけど…………。
「えっと、あの……、」
それを言うのは流石に恥ずかしい。
なかなか言い出せずにいると、
「言い難いことなら別にいいけど、服だけ用意しておくからさ」
あとは何とかしてよ、と。
「あ、ありがとう」
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