全ての記憶を《写真》に込めて
実際に絵を描いてもらうと、言った通り特徴がうまく掴めていないみたいだ。

「これは犬のつもりだけど、ほら違うでしょ」
「う、うん………、あ、こ、個性的だね!」
「変なフォローやめてよねぇ」
ほら、さっさとやる、とまた向き直る。

「もうこんな時間になっちゃったんだけどぉ」
「ご、ごめんね……」
思ったより時間が経って、もうそろそろ一日をすぎる頃だ。


そして、ここで、大事なことを思い出した。


「寝るところ、どこがいい?」
「え、えっと、地面でいいよ」
「それは俺が許さないからぁ」
「い、いひゃい……」

晴くん曰く、男のプライドがあるらしく、女子を地面なんて許せないらしい。

「俺が床で寝るからあんたはソファかベッドねぇ」
「それは申し訳ないよ!」
「はぁ?俺かいいって言ってんの」
「晴くんが風邪引いたらダメだからね!」
「風邪ひいてもあんたに関係ないでしょ」


……ん?



「は、晴くん」
「何」
「晴くんって私の名前呼んだことある?」
「急になんなの?あんた」
「ほら、あんたって……」
今思えば茉莉ちゃんのことも名前で呼んでない。
真依さんも瀬凛って呼んでいて、名前で呼ばない。


「晴くんって女の子の名前、呼ばないよね?」

……すると目をそらす晴くん。


「今まであんたで呼んできたのにさ、急に変わったら困るでしょ!」
と、怒った口調ながらも少し恥ずかしそうに言う。
「あと馴れ馴れしい感じがして嫌なんだよね」
「え、私は晴くんと仲いいと思ってるから全然大丈夫だよ!」
「そう意味じゃなくて…………はぁ」

大きなため息をついた晴くん。
あれ?困らせちゃったかな…。
「無理して呼ばなくてもい、」


_______________彩月。


「え、」
「これでいいんでしょ」
「え、は、晴くん名前、え!?」
「何!なんか文句あるの!!」
「な、ないよ……っ!」

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