全ての記憶を《写真》に込めて
「彩月ちゃんってお兄さんいたんだね〜」
「うん、でももう数年くらいあったことなかったから顔ををお互い覚えてなかったんだよ」
「そうなの?」

旅に出て行ったっきり帰ってこなくて、前に手紙もらったばかりで。

「彩月ー!」

今も見かければ、無邪気な笑顔で大きく手を振るお兄ちゃん。

「彩月のほうが年上のように感じる」
「お兄ちゃん今まで何してたんだろう…」

謎ばかりである。
お兄ちゃんな家を知っているから、昨日1度帰ってきたのだろうか。
それだったら困る。

「彩月、今日家まで案内してよ 俺覚えてなかった」

「も、もちろんだよ!」

良かった。
知らなかったみたい。

「あ、じゃあ俺なんか授業の見学があるみたいだからまたな〜」

そう言って立ち去っていくお兄ちゃん。

「ねぇ、彩月」
「ん?」
「お兄さんって、和久井くんのことを写真撮ってるって知ってる?」
「知らな………、え、写真撮れない……」

まだ晴くんの笑った顔が撮れてないのに。
いや、取れたかもしれないけど。

「大問題だよ!茉莉ちゃん!」

「いや、何も問題ないからねぇ」

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