全ての記憶を《写真》に込めて
「あ、晴くん」
「何」
「このカーディガンまた洗ってから返すね」
「別にそのままでもいいんだけど」
まぁ、あんたの家の柔軟剤の香り嫌いじゃないからいいんだけどねぇ。
そう呟く晴くん。
嫌いじゃないって言われるとすごく嬉しい。
選んでいるのは私じゃなくて、お母さんだけど。
家族を認められると嬉しいものだ。
_______________バタバタッ。
「お兄ちゃんは彼氏なんて許さないからな〜っ!」
「ちょ、お兄さん静かにしてなきゃ!」
「晴だけずるいぞ〜」
扉の裏側に隠れていたのか、お兄ちゃん達が部屋に入ってくる。
「えっ、お兄ちゃん!晴くんは彼氏じゃないよ!」
「彼氏候補も許さないぞ!」
「別に彼氏候補じゃないし」
私が何を言っても晴くんが何を言ってもお兄ちゃんはいやいやをするだけだ。
「俺が居ないあいだに彩月と仲良くなって〜っ!ずるいぞ!」
「だからぁ、俺は彼氏じゃないって言ってるじゃないですか おにーさん」
からかうのが楽しいのかニヤリ、と笑いながら“お兄さん”を強調する。
「うわぁぁあ!俺の可愛い彩月がこんなやつに取られるなんて!」
「お、お兄ちゃん!落ち着いて!」
「くぅぅ、お兄ちゃん絶対に結婚は認めないからな!」
そういい私を強く抱きしめるお兄ちゃん。
「お、お兄ちゃん……苦し……」
「彩月、お兄さんに愛されてるね〜」
「こんなに思ってくれるお兄さんがいていいね、彩月ちゃん」
「そうだぞ!彩月!お兄ちゃんは彩月の彼氏を認めないから!彩月に彼氏が出来たら泣くから!」
お兄ちゃんは長い間家族とあっていなくて、寂しかったのだろうか。
昔も色々心配かけてしまって。
今きっと、幸せなんだなぁ。