全ての記憶を《写真》に込めて



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俺らしくないかもねぇ。
誰かを励ますなんてさ。

だけど、ほおっておけなくて。
何とかしないと、と思ってしまって。


気がつけば、泣き声は消えていた。

「和久井くん、彩月寝ちゃったみたい」
「そう……、結構泣いてたもんねぇ」

どうするべきだろうか。
このままだと、俺だって体制が辛い。

「…よっと、」

そのまま抱き上げる。
こいつの部屋に集まっといてよかった。
そのままベッドに寝かせればいい。

「晴って、こういう時イケメンだよな」
「はぁ?意味わかんない」

寝かせれば、顔が良く見える。
目は赤く腫れていて、だけどどこかスッキリしたような顔で。

「あーぁ、腫れちゃってさ 結構可愛い顔してんのにもったいない」

顔にかかっている髪を除け、頬を撫でる。

「晴くんって、彩月のこと好きなのか?」

嘉月さんからの突然の質問。

「はぁ!?別に好きじゃないけどぉ!」

「和久井くん!彩月寝てるの!」

「…っ!…別に好きじゃないですけどぉ」

声を小さくしてもう一度言う。
そう、好きじゃないはずだ。
だって、だって………?

あれ?
なんだろう。

ただこいつはほおって置けなくて。
笑った顔が綺麗で。
気がつけばなんでも話せるくらい気を許せて。
一緒にいても苦じゃなくて。
いつだっけ。
翔が触れようとした時に、一度思いっきり止めてしまった時。
まさかあれは、本気で嫉妬してたとか…?

「…あるわけないじゃん」

ぼそっと呟く。


そうだよねぇ。

好きって言う感情がわからない俺が、恋できるわけがない。


だけど、もしかしたら。

好きって言う感情を知らないから、恋していることに気が付かないかもしれない。


「晴?どうした?」


もし後者だったら、ほおっておけないのも…………。
綺麗だと思うのも……………。


あぁ、もしかしたら_______________。



「好き、かもしれない…」




「えっ!まじで!」
「和久井くん、それホント!?」
「晴くん、彩月の事が……っ!俺の彩月なのに……っ!」


「〜っ、うるさい!」




これは、こいつが寝ているあいだのことだから。
俺たちだけの秘密。


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