全ての記憶を《写真》に込めて
――――――――――――――――――
元マネージャーのこいつは、言っていた通りすぐ見つけに来た。
「こんにちは、なぜ屋上なんですか?」
「…いつもどうやって見つけてんの?」
「凛桜くんってわかりやすいんですよね」
意味わかんない。
わかりやすくてもここまでわかんないでしょ、普通。
「で、何の用?」
「また、モデルをやるつもりはありませんか?」
前に電話でも伝えたでしょう、と。
「前にも言ったけどさぁ、あんたの下で動くのは絶対に嫌だから」
昔のような扱いを受けるなら。
もう二度とモデルをやらないと決めた。
「私のしたで働くのではなく、モデル業界に貢献すると考えるのはどうですか?」
「嫌だ、モデル業界とか興味ないし」
「じゃあ…」
「しつこいんだけどぉ、やらないって言ってるでしょ」
イライラしてくる。
こいつの話し方、余裕そうな笑み。
すべて言動で、こちらがいいように操られている気分になる。
「まぁ、凛桜くんは戻ってきますよ、絶対に」
「は?」
「大事な人ができたんでしょう、だから人間らしくなってしまったんです」
人形に感情なんていりませんよ、と俺の横を通りかけたところで足を止めた。
「あぁ、一つ言い忘れてたんですけどね」
「私の目的は、凛桜くんの勧誘ではないんです」
「凛桜くんの勧誘はついで的なものです 本当はですね」
と、耳を近づける。
「 」
「は………」
「では、次は前のように撮影現場で会えるといいですね」
ちょっと待ってよ、どういう意味…。
なんで、知って……、
「は、晴くん…っ」
「え…、なんでここにいるのぉ?」
「遅かったから、探しに来たの」
きっと走ってくれたのだろう。
心配かけてしまったのだろうか。
「ありがとねぇ、さ、帰ろっか」
「うん!……大丈夫だった?」
「何が?」
「さっきの人が“凛桜くんが落ち込んでたら謝っておいてください”って言ってたから…」
「…全然平気だったよ、別に」
変な事言って、こいつを怖がらせる訳にはいかない。