全ての記憶を《写真》に込めて

帰り路。
茉莉ちゃんと翔くんと分かれた後、二人きりで帰る。

緊張してしまう。


「あ、ねぇ」
「は、はい!」
「そんなに緊張しなくていいのに」
「えへへ、なんか、恥ずかしくて」
「まぁ意識してくれて嬉しいんだけどさぁ」

目を細めて微笑む晴くん。
一番はじめに出会った頃のように、ちゃんと自分を出して笑ってくれることが多くなった。
いや、ほとんど自分を出してくれるようになったと思う。

「いつから、嘉月さんいないの?」
「えっと…、明日まで家にいると思うよ」
「嘉月さんがいる間って、変な贈物来てないよねぇ」
「え、服…?来てないよ」
「そっか」
最近来てないってことはもうやめてくれたのかな、とか思ってた。
お母さんの服は一週間に一度の頻度で届くけど。

「まぁ、何かあったらすぐ相談しなよぉ」
どんなことでもいいからさ、と横でつぶやく。
「うん、大丈夫だよ 多分相手は私の事忘れてるんじゃないかな?」
「それだといいんだけど、もしもの話ねぇ」
「分かった、ちゃんと言うね」


そして、家の前まで送ってもらった。

「あ、嘉月さんのに付き合ったってこと言う?」
「お、お兄ちゃん許してくれるかな…」
「もし許さなかったら俺と別れるの?」
「絶対に別れない、お兄ちゃんを説得してくる」
すると、きょとん、とした顔の晴くん。
「え、どうしたの?」
「いや、彩月がそこまで考えてくれてたなんてねぇ」
「わ、私だってちゃんと考えてるよ」
「ま、応援してるからさ いざとなれば俺も嘉月さん説得しに行くし」
じゃあね、と晴くんから手を振ってくれた。

今まで私からだったのが、晴くんから。
そこがまた凄く嬉しい。

「また明日!」
大きく手を振る。

また明日が楽しみだなぁ。
< 193 / 255 >

この作品をシェア

pagetop