全ての記憶を《写真》に込めて


「ぅ…」

「マダラメ、橘くんに手を上げるなんてどういうことですか?」

「知らねぇなぁ、でも結果当たったのは娘の方だぜ」

頭がガンガンする。

「何やってんの!」
「ごめんね、体が動いちゃったから…」
「あんたさぁ、心配かけないでよねぇ」
「ごめんね」

「ここはオレたちに任せればいいから」

安心させるように微笑んで、手を握ってくれる晴くん。
何か策はあるのかな。
いや、もしかしたらないのかもしれない。
ただ、私を安心させるためかもしれない。



「橘くん、貴方はなんとも思わないんですか?」

「は?」

「まさか、私が今までしてあげたこと、忘れちゃいましたか?」

「…忘れるわけないでしょ」
ていうか忘れられない、と苦々しく呟く。





「彩月さんは、どこまで知ってます?橘くんのこと」






「わた、し……?」
「彩月、なんも聞かなくていいから、相手の言うことなんて何も聞かなくていい」

何のこと…?

だけど、晴くんは私に覆いかぶさるように抱きしめる。

「何も、聞かなくていいから」

消え入りそうな声。
弱々しく、いつものはっきりとした物言いもない。


「橘くん、そんなに言って欲しくないんですか?聞かれたくないんですか?」

「チッ、キリュウの悪い癖が始まりやがった…」


「橘くん、ほら、言って欲しくないなら頼んでくださいよ」

「うるさい」

「彩月さんに聞かれたくないんでしょう?」

「大丈夫、彩月、何も聞かないで」

なんで、そんなに怯えているの。



「は、晴くん……?大丈夫だ…?」

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