全ての記憶を《写真》に込めて
「まぁいいじゃねぇか、キリュウ、お前めんどくせぇ」
俺が殺せばいいじゃねぇか、と物騒なことを言う。
「殺すのはやめてください、鑑賞用に必要です」
「…分かったよ、まぁ、少し傷ついても文句言うなよ」
紘平からは金は奪うけどな。
その言葉が、重くのしかかる。
お父さん達に迷惑をかけられない。
「春馬!!」
晴くんが私からゆっくり体を離していく。
「晴くん、何しようと…」
「俺でいいでしょ、彩月は関係ないでしょ」
「橘くん、それはどういう意味ですか?」
待って、待ってよ。
彩月、ごめんねぇ。ゲームオーバーみたい。
そう呟く。
嫌な予感がする。予感じゃない。
晴くん、戻るの……?
「俺が昔みたいにいればいいんでしょ」
ゆっくりと、私から離れていく。
頭をさっき殴られたせいで、うまく体が動かない。
「晴くん………晴くん!!」
「晴!!!もうやめろ!!」
「うちの娘に手を出すな」
先程まで聞こえなかった翔くんの声。
それとともに、ずっと聞きたかった声。
「紘平ぇ……っ」
「警察には通報した」
「おと、うさん……」
翔くんの声が聞こえなかったのは、お父さんを連れてきたの?
でも、なんで、知って……。
「彩月、よく頑張った」
雪乃から様子がおかしいと聞いてすぐ帰ってきたんだ、と。
「良かった………」
「なんで…っ」
驚く晴くん。
「晴、彩月ちゃんの方にいろ」
「っ分かってる」
「晴くん!」
今度は絶対に離さない。
戻ろうとはさせない。
「晴くん、無茶しないでよ」
「彩月が助かるならいいの、別にさ」
「晴くんがまた嫌な思いして欲しくない」
「俺は彩月のためならいいよぉ、どれだけでも」
そんな自己犠牲の考え方しないで。
そう言いたくても、引き留めれなかった自分に腹が立つ。
「彩月は大丈夫なのね!」
「お母さん……、」
「もう処分でいいです」
残酷な言葉が響いた。