全ての記憶を《写真》に込めて
「は、晴くんってモデルだったんですか!?」
「そうだよ〜!和久井くん結構有名人なんだよ!」
そっか。
だから、こんなに綺麗なんだ。
「まぁもうやめたけどねぇ」
「晴のモデルの頃の写真見るか?」
「翔?」
「今持ってねぇけど今度持ってく、痛てぇっ」
「俺も見たくないんだからさぁ」
晴くんが、モデル、か…。
きっと、かっこよかったんだろう。
昔の私は見たことあるのだろうか。
「体調悪い?」
「〜っ!そ、そういう訳じゃ!」
覗き込まれて、顔が近くなる。
そうなるとやはり意識せざるを得ない。
「もしかして、彩月… 和久井くんのこと意識してる?」
「え、あ、えっ!」
「やっぱり〜」
な、なんでこんなにすぐ…っ!
まぁ、顔に出ちゃってた、かもしれないけど。
「でも…、晴くんが好きなのは、記憶のあった頃の私であって今の私じゃない、と思うんです」
だから…、と言葉を並べる前に頬を摘まれた。
「はぁ!?何ふざけたこといってんのぉ?」
「ひ、ひふぁい」
「俺は記憶がなくなっても彩月のこと大好きなんだからねぇ!あと、ちゃんと約束してんだからさぁ」
いい?分かった?との問いに頬を引っ張られて話せない私は顔を上下に動かした。
「だからさ、彩月ももう1回俺のこと好きになってよねぇ」
恥ずかしいのか、少し目をそらし気味で伝えられる。
「和久井くん…、私たちがいることはいいけど……、彩月のお母さんいるよ?」
「知ってるけど今言わなくちゃダメだったでしょ!!」
「晴くんイケメンね〜、晴くんになら彩月全然任せれちゃう」
もう一度、好きに…。
私なんかが好きになってもいいのだろうか。
『あなたの幸せが私の幸せとなるでしょう』
前の私は、今の私の幸せを望んでいる。
「ていうことだからさ、少しずつ俺のこともう一回知っていってねぇ」