全ての記憶を《写真》に込めて
もう一回知る、か…。
そうだね、晴くんのこともみんなのことももう一度。
「彩月ってピアノ興味ある?」
「え?」
「さっきパンフレットもらったんだけど結構有名なピアニストがこの病院で演奏するらしいんだ〜」
「そうなんですか?」
全然知らなかった。
「彩月、行ってみたら?気分転換になるかもしれないから」
お母さんからの許可も出た。
「やった!一緒に行こうね!」
「はい!」
茉莉ちゃん達との初めてのお出かけって程じゃないけど初めて一緒に病室の外に出る。
「晴くんも来ますか?」
「彩月が行くならねえ」
「じゃあ、一緒に行きましょう!」
「彩月ちゃん、俺も誘って〜」
「翔くんも、ぜひ来てください!」
「晴聞いたか!彩月ちゃんが俺も誘ってくれ、」
「うるさいよ」
「すまん」
そして、明日演奏されるピアノコンサートを一緒に見に行くことになった。
その後、茉莉ちゃんは門限が迫ってしまって、翔くんはバイトがあるらしく二人とも帰ってしまった。
お母さんはお父さんと交代するために家に一度戻った。
「ねぇ、彩月」
「なんですか?」
「俺がモデルやってるところ、見たい?」
「えっ、なんでですか?」
「んー、なんかねぇ 彩月が見たいっていうならやろっかなぁって」
やろっかなぁ、って。
翔くんから少し聞いた。
晴くんはモデルのころに大変なことがあったって。
「えっと…、きっと晴くんは綺麗だったと思うんです だから、ちょっと、見てみたい…かも」
でも、興味はある。
「綺麗だった、って過去形なのぉ?」
ニヤリと、口角を上げながら迫るように聞いてくる。
耐性がない私は慌てて訂正するしかない。
「そんなわけないですよ!晴くんはすごく綺麗でカッコいいんです!だから、その、顔が近いです…」
「いいでしょ」
うぅ、と自分の顔を隠すしかない。
絶対に顔が赤くなってしまっているから。