全ての記憶を《写真》に込めて
「じゃあ、できたら呼んで」
そう言って結城さんに託される。
「じゃあ、変身しちゃおう!」
「えっと…」
「お化粧するっていう意味だよ」
じっとしててね、と真依さんが横に座る。
晴くんはまだ撮影の続きがあるらしく、高林さんが連れていった。
「御園さんは可愛いね、ここでモデルやらない?」
「えっと、私は…晴くんを見に来ただけなんです」
だから、モデルはやらない。
「残念だね、まぁいつでも来ていいからね」
そう言って黙々とメイクを進める結城さん。
「晴くん、ちゃんとカメラ見てー」
ん?
なにか違和感。
「御園さんは晴くんのどこが好きなのかな」
「えっ、えっと……」
「結城さん、彩月ちゃんは付き合ってた頃の記憶がないんですよ」
「そうなの?それはごめんね」
辛いことを聞いてしまったね、と手を止め謝罪する結城さん。
謝らなくても…。
「晴くんの素敵なところなら言えますよ」
例えば、優しいところ。
笑顔が素敵なところ。
気配りが上手なところ。
みんなに好かれるところ。
他にも沢山あるけど……。
「一番は、記憶がなくなっても好きって言ってくれたことが嬉しいです」