全ての記憶を《写真》に込めて
「ごめん、全く覚えてない」
目が覚めた時の晴くんの第一声はそれだった。
「まって、俺が彩月に?」
「キスしたね、全く大胆だね、最近の子は」
記憶になかった分、ほっとした自分と少し残念な気持ちになっている自分がいる。
「彩月、ごめん」
「大丈夫です、疲れてたんでしょう?」
本当は死ぬほど恥ずかしかった。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
私はそこまで鈍感じゃない。
だから分かる。
きっと晴くんのことを信頼しているのだろう。
「彩月ちゃんは優しいね、怒ってもいいんだよ?」
「いえ、晴くんにいつも助けてもらっているので怒る権利なんてありませんよ」
あと、と付け足す。
「晴くんは別に嫌じゃないんです」
と。
「彩月」
名前を呼ばれる。
振り向くと、頬を包まれる。
今度はしっかりと目が合った。
「…んっ」
目が合ったまま唇が重なった。
「っ!」
反射的に目を瞑ってしまう。
だけど、すぐ離れる。
目を開けると晴くんが不敵な笑みを浮かべていた。
「セカンド、貰っちゃった」
「なっ、」
「ファーストは記憶にないからセカンドは焼き付けないとねぇ」
唇の端を舐める。
その姿が異様に色っぽい。
「凛桜くん!急はダメでしょ!」
「全く場所を考えてほしいね」
「嫌だった?」
晴くんが私の顔をのぞき込む。
「きゅ、急でびっくりしました……」
それでも嫌だと思わなかったのは、きっと…。
きっと恋をしているから。