全ての記憶を《写真》に込めて

やはり晴くんは優しい。

こんな私でも受け入れてくれるんだ。

記憶がなくても…。


「ねぇ、こっち向いてよ」

ゆっくり顔を上げると晴くんが愛おしそうに見つめている。
そして、ゆっくりと涙を掬う。

「ほらほらぁ、彩月はすぐ泣くねぇ」
目腫らしたらどうするの、と微笑む。

「そんなに、すぐ泣いてません…っ」

急いで目を擦り涙を吹く。

「晴くん、思い出作りましょう、今までよりもたくさんの思い出」
「そうだねぇ、じゃあ翔たちも呼ばなくちゃいけないんじゃない?」
もちろん二人きりの時間もとってよぉ、と意地悪な笑みを浮かべる。


そんな表情ひとつにまた魅了される。




「あの、今言わなくちゃいけないことが、あるんです」




晴くんが不思議そうに見つめる。
これはきっと朗報になるだろう。

でも、晴くんとの時間が減ってしまう。






「3ヶ月後、アメリカに渡って手術することになったんです」
お兄ちゃんが見つけてきてくれた病院で。



「だから、あの…」


一緒にいるって言ったのに…。
早速破ってしまいそう。


「嘉月さんから聞いてるけどぉ」
「えっ!?」
「倒れることはなくなるんでしょ、しかも3ヶ月後ってまだ時間あるんだし」
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