全ての記憶を《写真》に込めて
旅立ち
「彩月!もうそろそろ出発だ!」
お兄ちゃんに呼ばれる。
「晴くん、えっと………、」
とうとう別れが来てしまった。
目が覚めてから気がついたら今日だと錯覚してしまうほど一瞬だった。
一炊の夢。
こういうことを表すのかはわからないけど本当に一瞬。
「みんな待ってるからさ」
「うん」
「早く帰ってきなよ」
「うん」
「手紙も出すし電話もするから」
やっぱり寂しい。
_______________フワッ。
「ほら、泣かないのぉ」
「だって、晴くんに、会えな、」
「いい、聞いて。俺さ、夢が決まったんだよねぇ。とりあえずモデルで有名になる。そしたらさ、海外のテレビにも映るかもしれないでしょ。だからその活躍見ててよねぇ」
まっすぐと目を見て。
「うん、うん…っ!」
「よし、じゃあちゃんと帰ってきてよ。元気な姿で」
何度も頷く。
そして、お兄ちゃんがう一度呼んだ。
本当に行かなくちゃ…。
「じゃあ、またいつか会いましょう」
背を向ける。
だけど、声が聞こえた。
振り向けば甘い香り。
晴くんの綺麗な顔が近くて。
「浮気、しないでよぉ」
「当たり前です…っ!」
たくさんの荷物。
そこには今までのアルバムと、記憶がなくなってからも使っていたカメラ。
それとみんなで買った小物。
「さようなら!!」
ちゃんと治して帰ってくるから。