全ての記憶を《写真》に込めて



――――――――――――――――――


目の前でじゃれている二人を見てからそっと自分の手を見てみる。


翔があいつに触ろうとした時になぜか反射的に手が出てしまった。
あの時もそう。階段から落ちそうになっていた時も。

俺自身なんでこんなことしてるのか分からない。
しかも、写真で撮られるのも嫌って言ってるけどきつく言えないから許可だしているようにものだしぃ。
「はぁ、意味わかんなぁい」
「晴はお悩みのようだな、俺が相談乗るけど」
ニヤニヤしながら翔が俺の顔を覗き込む。
「別に悩んでないけどぉ」
なんか無性にイライラする。



「あ、晴くん今更だけど写真撮らせて!」
思いついたかのようにこっちを向く。
「はぁ?嫌だけどぉ」
ほら、ちゃんと嫌だっていう。だけど…、
「そっか、じゃあ、こっそり撮るね!」
あいつは懲りない。
「言ってる時点でこっそりができない気がするけど」
「あっ!」
急いで口を塞ぐ目の前のやつ。
「しかもさぁ今までバレてるじゃん」
「和久井くんには後ろに目がついてるのかな?」
「えっ、じゃあ、隠れても無駄ってことかな」
「そこ、変なこと追わないでくれる?あんたもさぁ、すぐ信じない」
「で、でも」
すぐバレちゃうからその可能性も…、ある。


「はぁ、せいぜい頑張ってよねぇ」


初めてあった時と同じ言葉をいう。
なんで応援しちゃうのかわからない。
ちゃんと拒絶できない自分がわからない。








心の奥の方に存在するこの気持ちにすら気づけない。





< 33 / 255 >

この作品をシェア

pagetop