全ての記憶を《写真》に込めて

「これでもうあいつら来ないでしょ」
「晴くんっていつもあんな感じなの?」
「まぁね」
「これで、晴くんが困ることなくなったのかな?」
「それは分からないけど、常識のある人間だったらあんたを撮らないために控えるとは思うよ」
そっか、少しは晴くんの役に立てたのかな。

「そう言えば、晴くんって“タチバナリオ”って名前だったの?」
帰り道ふと耳にした。
「そうだけど、何」
「綺麗な名前だね 漢字はどうやって書くの?」
すると、晴くんは教えてくれた。


凛々しい桜と書いて凛桜。橘は一文字で書く。それで、橘凛桜。


「凛々しい、桜………」
「………何」
「かっこいい名前だね!」
桜って綺麗だし。晴くんにピッタリ。
「俺がつけたんじゃないんだけどねぇ」
はぁ…、とため息をつく晴くん。


「だけど、私は晴くんは晴くんって名前がいいなぁ」

ふと気がつけばそんなことを口走っていた。

「だって、私、“春”好きだし………雨より“晴”の方が好きだし………」


今思えば凄くどうでもいい理由で恥ずかしくなってきた。


「………俺もこの名前嫌いじゃないよ 《春の晴れた日のような暖かい心》だっけ まぁ、俺には無理だけどねぇ」
悪い笑みを見せる晴くん。晴くんは充分暖かい心持ってると思うけど。綺麗な色をしてるし。

でも、それよりも晴くんと同じ意見になることなんてなかったから同じ気持ちを共有できて嬉しい。



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