全ての記憶を《写真》に込めて



――――――――――――――――――

「……彩月か、あんたの名前にも意味あるの?」
俺のばっかり聞いてさ、俺にも情報渡してもらわないとね。
「私?んー、たしか《大きな心で月までも覆い尽くすような自分の色を持ってほしい》、だったと思うよ」
大きな心、か。だから、こいつは優しすぎるのか。何でもかんでもホイホイいうこと聞いちゃってさぁ。

「でも、私には、無理かなぁ… 自分の色ってよく分からないから」

悲しそうに笑うこいつは、何を考えているのかわからない。単純そうで単純じゃない。芯が強そうで実は脆い、なんてこともあり得るかもしれない。


「でも、いつか見つけられるようになりたい!」


上を見て笑う。だけど、その瞳は空を移してないように見える。こいつは一体何を見ているんだろう。


「晴くん」

「何」


「晴くんは綺麗なままでいてね!」



突然の言葉。

「どういう意味」

「んー?なんとなく言いたかっただけだよ?」



「はぁ、当たり前でしょ 俺が汚れるなんて思ってるの? 俺はいつも綺麗なんだけどぉ」
外見は、だけどねぇ。性格はちっとも良くないことは自分でも知ってる。
「そうだね、晴くんは綺麗な性格してるもんね」
「はぁ?」
「あっ、そろそろ帰らなくちゃ! 私の家すぐ近くなの 一緒に帰ってくれてありがとう! 」
そして、とたとたと駆け足で走るあいつ。だけど、公園の入口でもう一度振り返った。



「晴くんっ!また明日っ!」



満面の笑みで大きく手を振るあいつに俺は“はいはい”と言って軽く手を振っただけ。



「はぁ……、意味わかんない」

俺が綺麗な性格とか頭おかしいんじゃないの。さっきも利用したばっかだしさぁ。





「でも、笑った顔…………」



_______________綺麗だったかもねぇ。



元モデルの俺が言うんだから間違いないでしょ、なんてね。
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